世界-8 水の一族は踊り子の命を貪る


水 の 一 族

水の一族は古きよりこの地に棲まっていた。

晶華が建国されるよりも鏡の地の人々が定住するよりも遥か昔から。

山脈の麓に点在する泉が水の一族の領域であり、泉と泉は地下で繋がっていた。

彼らはみな長寿で美しい容姿を持ち、魔力によって水を自由に操った。

一族の首領を立てはするが、群を為さず、魔力の強弱により種の優劣を決めた。

悪戯を好む気まぐれ屋であり、美食家を自負する。故に悪戯者シャッルと呼ばれた。

泉へ近づく者があれば、遊び戯れる機会を逃さず、誘い惑わしては水中に引きずり込む。

そうして美味なる命を貪るという。

踊り子は命がけで彼らと遊ぶ。

自らの果実を食わせることで契約を結び、大きな恵みを享受する。

人間の生とは水の一族にとっての束の間であったが、その命を捧げた。

こうして、水の一族は意図せず晶華を栄える存在となった。

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