世界-2 月の王は一人の女と契る


月 の 王

夜と朝の多くの子の中に月の王がいた。

夜を父とする一族の主たる存在だった。

月の王は、朝を母とする太陽の一族が知らずうちに育んだ人間に興味があった。

熱心に眺めていたが、ついには下界へ行く路を覚えた。

気まぐれに人間へ加護を与え、戯れに拐かした。

それは神がしばしば行うことであった。

ある月の明るい夜、下界で一人の女に目を留めた。

女は奴隷の身であったが、気高い心と清らかな体を持っていた。

月の王は欲しいという思いのままに女と契った。

人の姿形をした王は比類なく美しかったという。

それにあらがう理由はなく、時を待たずして麗しい子が生まれた。

子は月の加護を受け、美しさと力を備えていた。

 1-2